雫-シズク-
言われた通りに俺の列の奴が机の横に来ると、一瞬驚いたように伸ばした手をぴくんと弾かせた。


そしてまだじっと問題用紙を見つめている俺に嘲笑うみたいに吐き捨てた。


「うわっ、なにこれ?気持ちわるっ」


どうやらびっしりと書き込んである俺の答案用紙を見た感想らしい。


……お前らの落書きの方が気持ちわりーんだよ。


下を向いたままおかしくもないのに勝手に口のはしがにやりと引き上がる。


「えー、これで実力テストは全て終了しました。担任の先生が来るまでそのまま静かに待つように」


すでにその声が聞こえないくらい教室内は騒がしく、少しずつ俺は苛付き始めていた。


早く帰ってもう一度問題を復習したいのに。こんな場所に長くいたら馬鹿が移りそうだ。


鞄に教科書をしまいながら、席を立ってたむろした男女から聞こえてくる耳障りな雑音をシカトしていると、急に喉の奥が熱くなってきた。


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