雫-シズク-
実力テストの結果が出てから数日後の昼休み、俺は担任のいる職員室のドアを開けた。


いくつも並ぶ机には書類やバインダーが無造作に積まれ雑然としている。


「先生、進路のことで相談があるんですけど」


背後からそう声をかけると椅子に座っていた菅野が振り返った。


「おお、浅野。進路がどうしたって?」


どうやら少し遅い昼飯だったようで、食べかけのコンビニのおにぎりを机に置きペットボトルのお茶をぐいっと口にふくんでいる。


「国立の医大に行きたいんですけど、このまま頑張ればなんとかなりますか?」


もともと二重のはっきりした目を更に大きく広げた菅野が、口の中のお茶をごくりっと音を立てて飲み込む。


「……国立の、医大?」


もうすぐ二年が終わるというのに今まで一度も話したことがなかったから、余計驚いているんだろう。


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