雫-シズク-
「たいしたもんだな」


そこから最初は戸惑っていた菅野の表情がかたく引き締まっていく。


するとなんだか急に机の上に乱雑に積み上げられた書類の束をばさばさとあさり始めた。


「えーと、あったあった。浅野の今回の偏差値は……、ずば抜けているな。しかし残念ながらうちは進学校じゃない。もし医大を狙うような学校でこの偏差値を取るとなると、かなり難しいのはわかるな?」


多分馬鹿ばっかりの中でトップでも、しょせん頭の良い学校じゃ並かそれ以下ってことなんだろう。


こくりと頷く俺を見たあと菅野が手元の紙に視線を戻す。


「教科書だけじゃ不安でこれから参考書や問題集を買うなら、とにかく基礎を完璧にして応用問題も自分の力で解けるようになる物がいいと思うぞ。あとは一度どこか大手の予備校で模試だけ受けてみるのもありだが……」


「模試、ですか。でもそれって通っていなくても大丈夫なんですか?」


金がなくて始めから自分でどうにかしようと考えていた俺は、予備校のことなんかなに一つ知らなかった。


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