雫-シズク-
四角い箱に入る前の温かくていつも僕を抱きしめてくれたお母さんを。


お風呂場で倒れてたあの日の朝も笑顔でいってらっしゃいって言ってくれた。


その前の日は僕の大好きなハンバーグを作ってくれて、お父さんとおいしいねって言って食べたんだ。


僕が泣くとやさしく頭をなでてくれたし、僕の好きな歌もうたってくれた。


明るくてきれいでじまんのお母さんだから、参観日は早く来ないかなっていつもドキドキして待ってたんだ。


一回笑うと止まらなくなるくせがあって、ずっとくすくすおかしそうな顔は見てるだけで僕も楽しかったな。


寝れない時はゆっくりおでこをなでてくれて、すぐ近くにあったかいお母さんがいると思うとすごくほっとして……。


楽しかったことを思い出しているはずなのに、僕は知らないうちにくちびるを強くかんでいた。


だって頭の中にいるお母さんは笑っているのに、僕は全然笑えなくて辛くなるばっかりだ。


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