雫－シズク－

中からいつも優しく話しかけてくれる中年の美江子が姿を現す。


「美江子おばさん！助けて！」


「圭介くん？どうしたの!?」


少年のただならぬ様子に美江子も血相を変えた。


「お母さんが怪我してるの！お父さんも具合悪くて動けないの！」


驚く美江子を小さな少年が引っ張るように家に連れ込む。


少年に手をつかまれてバスルームの母親の姿を見た美江子は、信じ難い光景に小さな悲鳴をあげた。


「早苗……さん!?」


手で口を押さえながら近寄ろうとしない美江子に、少年は母の体をさすりながら叫んだ。


「おばさん！お母さん痛いから早くお医者さんに行かなきゃ！」


固まってぴくりとも動かないその姿から、美江子は明らかにもう生きてはいないと直感する。