雫-シズク-
そう言って体を流し始める僕に亮くんがぴりぴりし始めた。


「なんだよわかんないって。病気とか事故とかくらいわかるだろ?」


なんだかしつこく亮くんのせいで、僕はあの日のことを思い出してしまった。


学校から帰って見付けた、天井からぶら下がっていたお父さんとお風呂場でたくさん血を出していたお母さんを、はっきりと。


テレビみたいにきれいに見えて、我慢していた吐き気がぐっと強く込み上げてくる。


「……わからない」


気持ち悪い胸をぎゅっと押さえて小さな声でやっと答える。


だってどうしてお父さんとお母さんが小さくなったかなんて、誰も教えてくれなかったよ?


僕がここに来なきゃいけなくなったのだってまだ信じられないんだよ?


「あーもうウザイなぁ!葬式で親の死んだ顔見たんだろ?ならどう死んだかくらいわかるだろ!?つうかさー、二人とも一緒に死ぬなんて普通ありえないじゃん?お前きっとじゃまくさくて捨てられたんだよ、ははは!」


< 44 / 347 >

この作品をシェア

pagetop