雫-シズク-
少年の願いは叶わず、ひっそりとまるで隠されるように父と母の葬儀が行われ始めた。


ごく身近な親類と交流のあった隣人のみがバタバタと集まり、少年はほとんど見知らぬ人達を前に何が起きているのかわからずおどおどとしている。


狭い家が更に狭くなり完全に居場所を失っていた。


「どうして自殺なんか……」


「なんだか義雄さん病気だったらしいわよ?」


「うつ病って言ってなかったかしら?」


「早苗さんまでこんなことになるなんて……。相談してくれたらよかったのに……」


少ない人数で焼香も終わり線香の香りだけが漂う静かな空間。


あちこちでひそひそと聞こえる話し声の中、少年は大人達の集まる居間のすぐ隣の部屋へ行き、並んで横たわる二人の亡きがらの間にゆっくりと座った。


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