雫-シズク-
「……お前の父親は、優しかったんだな」


なんだか元気のない葵さんがつぶやいた。


暴力をふるうお父さんの方が僕には信じられない。


でも僕はなんとなくやさしかったなんて言えなくてだまってしまった。


「母親も優しかったか?」


葵さんの声が淋しそうに聞こえたからどう言えばいいかわからなかったけど、僕は正直に答えた。


「はい」


「……そっか」


それっきり葵さんはベットでなんにも言わなくなった。


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