雫-シズク-
毎日淋しさしか感じない僕は、今でもお父さんとお母さんを思い出しながら眠っている。


真っ暗なベットでなんとなくもう会えないんだとわかった時から、涙は出てこなくなった。


いくら会いたいと願っても来ない二人はきっとどこにもいないから来れないんだ。


でもそれを信じたくない気持ちもあるから、二つの心が胸の中で戦ってばらばらに壊れそうな時がある。


だからそうなるといつも笑顔だった二人の顔を浮かべて落ち着くようにしているけど。


なんだか自分が楽になるためにわざとあたたかい記憶を思い出しているみたいで、少し悪いことをしている気もする。


僕は心の奥の奥でずっと二人を追っているけど、絶対に追い付くことのできないその背中がたまに冷たい。


そんなどろどろの沼に足を突っ込んでじたばたするような辛さだけ我慢すればなんとかなる生活を。


僕は一日も早く大人になりたいと願いながら生きていた。


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