雫-シズク-
「カウンセリングを受けに来ました」


桜井さん達や他の指導員がいる中、少し太めの佐藤さんがこっちを向いてにこりと笑う。


……本当の気持ちを言えない僕は悪い子なのかな。


なんとなくそんなことを考えて動きが止まった僕に佐藤さんが言った。


「それじゃ圭介くん、こちらにどうぞ」


そして低い仕切りの向こう側を手でさす。


「はい」


僕はいつもと同じように小さなテーブルだけが置いてある狭い場所に行って、たたんであるパイプ椅子を出した。


ずっと前からほつれてぼろぼろになったままのぺたんこのクッションが気になる。


すぐに佐藤さんもがたがたと椅子を出して、かなり狭そうに僕の向かいに座った。


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