雫-シズク-
「えーと、圭介くん、最近気になることとかあるかな?」


笑顔のままちらりと僕を見たあと、持ってきた紙に僕の名前を書き始めた。


少し考えてから小さな声で答える。


「あの、……新しい服が欲しいんですけど」


両親のいない僕は、他のみんなみたいに自由に使えるお金が全然ない。


親が払う費用の中から毎月お小遣いをもらっているみんなはそれで服や必要な物を買えるけど、僕にはそれができない。


この学園に来てからずっと、自分で持ってきた数枚の服とたまにもらえるお下がりを着ていたけど、それもかなりくたくたになってきている。


僕だけ同じ服ばかり着ていることが、学校でも学園でもすごくはずかしかった。


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