ライアーライフスタイル
「生憎ですが、どちらも違うと断言します。私はあなたとは会ったことがないし、結婚もしません」
あんたの言い分はとっても面白かったけれど、正体がバレるのも、結婚するのも、絶対にお断りだ。
山村がムッと表情を歪める。
「そんなの、わからないじゃないですか!」
「わかりますよ。なぜなら私たちはお互いの記憶がないし、私は誰とも結婚するつもりがないからです」
「誰ともって……」
ぐ、と彼が怯んだところで、私は「失礼します」と歩き出す。
しかしすぐに腕を掴まれて、強制的に彼の方を向かされた。
小学校時代より男らしくなった彼の顔が、魅力的で腹立たしい。
「じゃあ、せめて出身地を教えてください。俺、親が転勤族だったから、学校が何度も変わったんです、もしかしたらその中の……」
マズい。
「お断りします!」
強めに告げ、掴まれている彼の手を振り払う。
これ以上思い出されると困る。
彼の口から学校というキーワードが出てしまった。
バレるのは時間の問題かもしれない。
やっと手に入れた理想の生活を脅かさないで。