ライアーライフスタイル
「そんなに例の彼が嫌なの?」
「そう、嫌なの。あいつに会うかもって思ったら、買い物に出かけるのも億劫になるんだもん」
出くわすのももちろん嫌だけれど、取引先の人間にスッピン&部屋着で酒を買う姿なんて見られるわけにはいかないのだ。
心の休まらない街でなど暮らしたくない。
「そんなに嫌わなくてもいいのに。イケメンなんでしょ?」
「イケメンでも、言うことメルヘンすぎてキモいから」
見た目がいい男をイケメンと表現するのなら、彼は間違いなくイケメンだ。
だけど中身が伴っていないと、イイ男であるとは認められない。
「何言ったの?」
「私たちはお互いが運命の相手で、将来結婚するかもって」
「ぶはっ……運命って、何それ! 超ウケるんだけど!」
あかりには笑い話として披露したが、私にとっては深刻な事態だ。
もちろん運命の相手などではないからその心配はないのだが、少しでも彼と距離を置いて、たとえ彼が私のことを思い出しても安全に暮らせる場所を確保しなければ。
私はそのために物件を探しているのだ。