ライアーライフスタイル
一通り笑ったあかりは、自らの左手の薬指に着けているエンゲージリングを指差した。
「その彼、次に会う時にでも指輪を持ってくるかもよ?」
山村が指輪を持って営業所に来る様子を想像してみる。
様にはなるだろうが、喜ぶのは堀口さんだけだ。
「さすがにそこまで馬鹿じゃないって。もし持ってきても受け取らない」
「もらえるものはもらっておけばいいのに」
「やだよ。受け取ったら結婚しなきゃいけなくなるじゃん」
「してみたら? どんな子供が生まれるか楽しみね」
笑えない冗談だ。
我が親友ながら、本当にいい性格をしている。
他人の災難や不幸を笑うような女だが、生まれながらの美人で、これから幸せな結婚までするとは、まったく世の中は不公平だ。
「私は誰とも結婚するつもりありませーん」
「はいはい、そうでしたー」
あかりは自身の指輪に触れ、笑いながらダイヤのの輝きを楽しむ。
彼女が結婚すると言いだしたときは、本当に信じられなかった。
私と同じく遊んでいる男はたくさんいたし、誰とも真面目には付き合っていなかったはずだ。
指輪だけもらっておいて「やっぱ結婚やめる」なんて言い出すような気が、しなくもない。