ライアーライフスタイル



「こんにちはー。オリエンタル・オンの山村です」

数日ぶりに、山村が我が営業所にやってきた。

すごく会いたくないけれど、対応するのは私の仕事だ。

「……お世話になっております。先日は懇親会にご参加いただき、ありがとうございました」

「……恐れ入ります」

先日の運命発言のせいで、私たちはますます変な雰囲気になっている。

山村は私の助言通り、新田主任に取り入ることに成功したようだ。

主任も「あの山村ってやつ、いいね。使える」と言っていた。

しかし、気に入られたということは、より頻繁に営業所へ来るということだ。

飲み会の時は何か償いをと思ってアドバイスしたけれど、今さらながら失敗だったかもしれない。

新田主任が「使える」と評価するということは、一般的に「仕事ができる」ということだ。

私はそれがとても気に入らない。

山村にはダメな男になっていてほしかったのだ。

高校を中退し、バイトを転々として、そのうちヤっただけの女に子供ができて、渋々結婚し、大して稼ぎもしないのに酒ばかりガンガン飲んで、咎められると暴力を振るう、どうしようもない男であってほしかった。

それが実際は、ちゃっかりそこそこの大学を卒業して、仕事のできる爽やかイケメン営業マンとして充実した毎日を送っているのだ。

彼女はいないようだが、普通にイイ男になってしまったのがすごく嫌だ。

性格の悪さを露呈するようだが、私は彼に不幸であってほしい。


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