ライアーライフスタイル



この日の午後9時過ぎ。

私は会社から少し離れた土地のホテルで、真っ白なシーツを乱すことに精を出していた。

「ねえ、主任」

彼に跨った態勢で、会社にいる時のように呼びかける。

「んー?」

彼はこの状況を一種のプレイとして楽しむように、口角を上げて応える。

我を失う前の緩やかな快楽に耐えながら、私は聞いてみたかったことを尋ねた。

「主任は、結婚して幸せ?」

新田主任は苦笑いをした。

当然だ。

今まさに、不倫相手と行為の最中なのだ。

こんな時に家族のことを思い出させるなど、愛人としては邪道な行いである。

所有者に無断で拝借しているのは悪いと思うこともあるが、所有者とはできないというのだから、不憫だと同情している。

「安心して。主任が幸せじゃなくたって、離婚して私と結婚してとか絶対に言わないから」

私はただ、あかりが「わからない」と答えた質問に、彼がどう答えるか知りたいだけだ。

「ははは」

笑った彼が体を起こし、今度は私がベッドに背中を預ける形になった。

より深く彼を感じることができるが、私たちは0.02ミリの薄い壁に隔てられている。

私は彼がそれなりに好きだけれど、愛してはいない。

だから彼の妻に嫉妬することもない。

もしかしたら彼の妻は不幸かもしれないが、私が知ったことではない。

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