ライアーライフスタイル

「試練か……私たちも乗り越えられるのかな」

「できると信じましょう」

山村が、あかりに“いい人”として映っているのが癪だ。

あかりにはさんざん彼の悪口を吹き込んできたけれど、もう同調してもらえない気がする。

「参考程度に聞かせてほしいんだけど、男の人も披露宴に憧れがあったりするの?」

この質問の重みがわかっていない山村は、至極ライトに答えた。

「人によると思いますけど、僕も憧れはありますよ。自分が何かの主役になることって、人生においてそうチャンスはありませんから」

ああ……。

今、その答えはまずい。

「そっか」

あかりが立ち止まった。

2、3歩遅れて私と山村も足を止める。

「やっぱりあたし、結婚やめるわ」

山村が焦ったように尋ねる。

「えっ……どうしてです?」

無理もない。

少なくとも彼は、あかりが結婚に前向きになることを望んで発言していたつもりなのだ。

それが裏目に出ていたことなど、事情を知らない彼にわかるはずもない。

< 136 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop