ライアーライフスタイル
「もうやめて!」
あかりがひときわ大きな声をあげた。
私は言われた通り、いったん彼の悪口を言うのをやめて口を結ぶ。
「あいつの悪口、言わないで。モラハラとかないから。優しいやつだから」
婚約者を庇うあかりの表情にキュンとする。
だけど、まだ芝居の途中だ。
ここでやめるわけにはいかない。
「優しい男なら周りにたくさんいるでしょ。あかりなら、もっとレベル高い人と結婚できるって。その幼馴染みの一方的な願望のために、自分が苦しい思いをしてまで結婚する意味ある? たぶんだけど、この人の方がよっぽどいいんじゃない?」
そうまくし立てて山村を差し出すと、彼は私を睨み諌めた。
「弦川さん! 言い過ぎですよ」
うるさいな。あんたは黙ってて。
言い過ぎだということくらいわかっているし、私はわざとそうしている。