ライアーライフスタイル

涙、引っ込め。

いつでも女の武器が使えるよう「出す」方の練習はしていたけれど、「止める」方の練習はしていなかったから上手くいかない。

「弦川さん……」

山村にも、泣いていることを悟られてしまったようだ。

「ごめんなさい。変なケンカに巻き込んでしまって」

面倒な女だってわかったでしょう?

だからもう、私なんかに構わないで。

「それはいいんですけど。大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ。あそこまで言ったのは、わざとですから」

「わざとって……」

「あれだけ言えば、私への憤りとか悔しさで、もう一度結婚を前向きに考えてくれるはずです。でも、さすがにちょっとしんどかったかな」

ははは、と笑ってみるが、まだうまく笑えない。

涙はまだ止まらない。

サングラスを着けていてよかった。

この男にふたたび無様な泣き顔を晒すのはごめんだ。

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