ライアーライフスタイル
日陰の存在である私は、弦川という名字をもじり、冴えないことへの皮肉を込めて「つる子」と呼ばれていた。
私はババ臭いこのあだ名が好きではなかったけれど、真咲という男みたいな名も好きではなかったから、つる子なら辛うじて女性らしいと思い、甘んじて受け入れていた。
というより、このあだ名を付けたリーダー格の女子に逆らえなかったという方が正しい。
もっと可愛いあだ名だって付けられたはずなのだ。
当時は私も人気者の山村と仲良くなることを夢見ていた。
けれど、自分に自信を持っている女子たちのように馴れ馴れしく接したいとか、あわよくば両想いになりたいとか、そんな風に思ったことはなかった。
ただ同じクラスのメンバーとして、気軽に言葉を交わせるようになりたかっただけだ。
だから一度くらいは席替えで隣の席になれたらいいなと思っていたけれど、席が隣になることはなかったし、近くの席になっても目立つ子たちが作り上げているきらびやかな世界に飛び込む勇気は、私にはなかった。
彼と言葉を交わしたのは、ほんの数回だったと記憶している。