ライアーライフスタイル
「つる子!」
山村は私を見て恥じるような顔をした。
誰にも内緒で練習したかったのだろう。
私は途端に申し訳ない気持ちになった。
「ごめんね。邪魔しちゃったね」
緊張のせいで口が震えて、やけに早口になった。
「いや、別に……」
せっかく山村と二人きりだけれど、気まずい空気に耐えられず、私は急いで自分のロッカーへと向かい、体操着を入れた巾着を掴み取る。
たかだか十数秒。
けれど、しんとしている教室では間が持たず、私は言葉を発した。
「偉いね、練習してるんだ」
「うん。俺、苦手だからさ」
山村のリコーダーが下手であることは周知の事実。
ヒョロヒョロと情けない音しか出せず、指が追いつかず遅れてしまう。
でもそこが可愛いと評判だ。
「つる子はリコーダー上手いよな」
「え? そうかな」
確かに私はリコーダーが得意だったが、それを彼が認識していることに驚きと嬉しさを覚える。
山村が私を見てくれていたのだと、舞い上がった。