ライアーライフスタイル

「つる子はどうやって上手くなったの?」

「うーん。特に練習とかはしてないけど」

彼とまともな会話をしたのはこれが初めてだったと思う。

普段は高飛車なリーダー格の女子たちが囲んでいて、私は彼に近づくことすら許されない。

リコーダーの練習だって、我先にと率先して付き合うことだろう。

だけど今は誰もいない。

この機会を得て嬉しくなった私は、彼に少しだけレクチャーをすることにした。

「そんなに強く握り締めなくても大丈夫だよ」

「吹くときはフーッて吹くんじゃなくて、トゥーって吹くの。吹きっぱなしにしないで、一音一音ちゃんと区切って吹くんだよ」

「指の動きは体で覚えられる。体が覚えたら、きっと次の音楽の時間には上手になるね」

山村は素直に私の話を聞き入れ、練習に精を出した。

「こんな感じかな?」

「うん、すごくよくなったね!」

私のアドバイスで彼が少しずつ上達していく。

それが嬉しくて、私は帰るのを忘れるほど指導に熱中した。

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