ライアーライフスタイル
「殴られるの、覚悟してたのに」
「ビックリしすぎて、そこまで考えられなかった」
だって私はそもそもレズビアンではないし、舟木が嫌いなわけでもない。
「嫌だった?」
「ううん。ドキドキした。ていうか今もしてる」
ドキドキするのは驚いたせいだ。
恋じゃない。
だけど舟木とのキスは嫌じゃなかった。
私は比較的潔癖だと思っていたけれど、案外誰とでもキスできる女なのかもしれない。
「今日はこのくらいで勘弁しといてやるよ」
「なんでそんな偉そうなの」
「また誘うよ」
「うん、ありがと」
舟木はそれ以降駅で別れるまで、私には指一本触れなかった。
限界だと言って許可なくキスをしたけれど、そこで引いたのが彼の誠意であることはわかっている。
私はもっとちゃんと、彼のことを考えた方がいいのかもしれない。