ライアーライフスタイル
無視して店へ向かった私の腕を山村が掴んだ。
「待って!」
電車の冷房で冷やされていた私の腕が、彼の手の熱を急速に吸収する。
彼自身が私の内部に入り込んできているような錯覚がして、妙な緊張が走った。
平たく言うと、ドキドキしているということだ。
「放してください」
脈が強くなったことを悟られたくない。
山村には調子を狂わされてばかりだ。
「知りたいんです、弦川さんのこと」
「私は知られたくありません」
「つる子なんでしょう?」
「違います」
認めたくない。
関わりたくない。
山村といたらブスだった自分に戻ってしまいそうで怖い。
「山上(やまがみ)小学校、4年2組。出席番号は誕生日順で、たしか俺より少しだけ前だった」
魔法を解く呪文が聞こえる。
化けの皮が剥がれていく。