ライアーライフスタイル
この1ヶ月という短期間で、キープしていた男を何人も手放した。
新たな出会いを求めて出歩く気力もないため、わりと暇だ。
大学を卒業し、就職して仕事に慣れてからのここ数年間、優越感を得るために精力的に活動していた。
ここらで一度休止してみてもいいだろう。
自分の力で生きていくため、今は仕事に没頭する時期かもしれない。
「弦川さん。頼んどいたカタログ、準備できてる?」
たった今外出先から戻ってきた新田主任が慌ただしく尋ねてきた。
彼はこれからすぐミーティングルームで商談があるのだ。
「はい。すでにミーティングルームに置いてありますけど、変更でもありましたか?」
「いや、ないよ。ありがとう。いつも助かる」
こんな風に感謝されると、私は優越感が得られる。
自分には能力があると認めてもらったようで、心が潤うのだ。
私は別に、女としての優越感だけを求めているわけではない。
社会人としても、他より優れた結果が出せるよう努力している。
主任は私との不適切な関係など微塵も感じさせることなく微笑んで、バタバタ商談に向けての準備を始めた。
気が重い。
なぜなら新田主任の商談相手は、山村だからだ。
彼を迎え入れるのは、私の仕事なのである。