ライアーライフスタイル
間もなくして、その時間がやってきた。
「こんにちはー。オリエンタル・オンの山村です」
相も変わらず爽やかな風貌で入って来た山村に、私は白々しく頭を下げた。
「お待ちしておりました」
顔を上げると彼と目が合う。
彼が私に構う気だとわかったけれど、会社では逃げられない。
「弦川さん」
「何でしょうか」
「今日もお綺麗ですね」
山村はとびきりの笑顔でそう言った。
胸が勝手に動揺するが、私は平静を装うしかない。
「……恐れ入ります。こちらへどうぞ」
白々しく、あくまで他人行儀に。
彼に私を口説く隙を与えてはいけない。
山村をミーティングルームへ案内し、冷たい麦茶を出す。
「新田も間もなく参りますから、お茶でものんでお待ちください」
「ありがたいです。外は暑かったので、生き返ります」
「おかわりありますから、ご遠慮なくおっしゃってくださいね」
というのはもちろん社交辞令なので、遠慮してくださいね。
私にも仕事があるからお茶汲みに時間を割けるほど暇じゃないし、あなたのことが嫌いだし。
「ははは、全然気持ちがこもってないですね」
私の本音は見透かされていた。
「そんなことないですよ」
嫌味ったらしく言ったのは、わざとだ。