ライアーライフスタイル
山村は私がツンとして黙ったのを見て、嬉しそうに笑っている。
その表情には見覚えがある。
彼は小学生の頃、好きな女の子には意地悪をするタイプだった。
あれから15年以上も経ったのに、変わっていないのか。
「仕事で来てるんでしょう? からかわないで」
毅然として言ってみるが、彼の表情に変化はない。
「からかうのをやめると甘い言葉で口説いちゃうけど、いい?」
甘い言葉でって……何を言うつもり?
いや、別に気になるとかではなくて。
「それも嫌」
山村には、人間的にも男性としても魅力がある。
私も傷つけられるまではその魅力に囚われていた。
私はこの世に存在するどんな悪よりも、山村を恨んでいる。
だから、このくだらないやり取りは、不快でしかない。
不快でしかないはずなのだ。
「怒ってても可愛いな」
「は、はあっ?」
原因のわからない苦しさが胸いっぱいに広がっていく。
主任、早く来て……。
そう思った次の瞬間、コンコン、とノック音がした。
「お待たせしました。新田です」