ライアーライフスタイル
新田主任の入室により、私と山村は無駄口を叩き合っていた口をつぐんだ。
山村は表情をビジネスモードに戻し、挨拶のために立ち上がる。
「今日はよろしくお願いします」
こう見ると、私と話していた時とは全然顔が違って見える。
彼も本当は裏表があって、私とあまり変わらないのでは。
そんなことを考えながら、商談の邪魔をしないよう、私は静かにミーティングルームを出た。
部屋を出る直前、山村と目が合った。
彼は不敵な笑みを見せ、私はそれを軽く睨み付ける。
扉を閉めた瞬間、ふと気づく。
今のやりとりはまるで、新田主任との秘密のアイコンタクトみたいだった。
「……ありえない」
新田主任と山村。
私の秘密……つまり弱味を握っている二人は、今後頻繁に顔を合わせて仕事をすることになる。
新田主任に限っては私とのことを漏らすはずがないが、山村については警戒が必要だ。
私を探る目的で、主任に何か吹き込むかもしれない。
どうか山村が余計なことを言いませんように。
私は不安を抱えたまま仕事に戻った。