ライアーライフスタイル
彼の乗換駅に到着した。
私はもう少し先までこの電車に乗る。
車両の扉が開いた瞬間、私の手は解放された。
「じゃあね、弦川さん」
汗ばんだ手がヒヤッと熱を放出する。
山村は人の波に押し出されるように降車していった。
窓越しにホームを歩く山村を目で追う。
山村も私を見ている。
彼は「またね」と口を動かし、微笑んで手を振った。
私も笑って手を振り返しそうになったけれど、すんでのところで思いとどまる。
代わりにフンとそっぽを向き、怒っている風を装う。
そんな私を見て、彼はまた嬉しそうに笑っていることだろう。
それでももう、あまり嫌な気持ちはしなかった。
これは慣れただけで、気を許したわけじゃない。
あかりを気にかけてくれて嬉しかったから、一時的に心が広くなっているだけだ。