ライアーライフスタイル

それ以前に、私はまだ彼女として何を話していいかさえ掴めていない。

今まで彼にしていたみたいに高飛車な女のふりを続ければいいのだろうか。

それともしおらしく一歩引いた方がいいのだろうか。

正解がわからない。

呼び方だって、今までずっと「舟木くん」と呼んでいたから、急に「直弘」とも呼べない。

「直くん」あたりから始めてみようかと思っているけれど、それもまだ勇気がいる。

一緒に歩いているだけでこんなに考えなきゃいけないことがあるのに、ちゃんとお泊まりを成功させられる気がしない。

準備はしている。

覚悟も決まってはいる。

けれど、私の体力と神経が持つか心配だ。

世の女性たちは、みんなこんな風に頭の中で様々なことを考えてデートしているの?

10代とか学生時代とか、若い頃なら多少の失敗も許されるだろう。

だけどこちとら手練れのイイ女を演じたことで成立したカップルだ。

失敗は許されない。

「真咲」

「な、なにっ?」

「今日、何時まで大丈夫?」

き、来た……!

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