ライアーライフスタイル
私たちはその後、小さいけれどムードのあるオシャレな店で食事をした。
次の目的地は都内にある舟木の自宅だ。
恋人らしく繋いだ手から、これから迎える甘い夜への期待を感じる。
本当の意味で二人きりになる時間が、いよいよやってくる。
上手くやれるか心配だ。
乗り慣れない路線のシートの色やアナウンスが新鮮で緊張が増す。
優しい彼は一人分だけ空いた席に「一日中歩き回ったて疲れただろ?」と私を座らせてくれた。
彼に愛されている私は幸福者だ。
それなのに、私はずっと、頭で別の男のことを考えてしまっている。
あいつとデートをしたら、一緒にいる間ずっと私をからかって笑うんだろうな。
先日のように卑猥に手を撫で回したり、私にしか聞こえない小さな声で羞恥を煽るようなことを囁いたり、きっとする。
だけどきっと、あいつも私を空いた席に座らせてくれるのだろう。
そして彼の部屋で二人きりになったら……。
もうやめよう。
こんな時に、一体何を考えているんだか。
私が山村とデートなんて、絶対にするわけがないのに。
緊張で頭がどうかしてしまった。