ライアーライフスタイル



「どうぞ」

「お邪魔します」

舟木のクラスマンションの一室は、私が住んでいる部屋よりも明らかに立派だった。

建物の外観からも察していたが、ここは単身者向けの賃貸住宅ではない。

「広いね」

11階の3LDK。

一人で住むには広すぎる。

「転職する気もないし、遠方への転勤もないからね。4月に独身寮を追い出される機会に買ったんだ」

「買ったの? まだ若いのにすごいね」

「おかげで借金持ちです」

「住宅ローンは借金って言わないよ」

結婚願望が強い舟木のことだから、将来家族が増えることを想定して購入したのだろう。

ここなら子供が2〜3人できても大丈夫だ。

男の独り暮らしだと聞いていたから単身者向けの狭い部屋だと思っていたのに、こんな立派なお宅に連れてこられて、緊張は増すばかりだ。

「コーヒーでも飲む?」

「うん。私、やろうか?」

「いいよ、俺がやる」

「ありがとう。じゃあ、大人しく座ってるね」

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