ライアーライフスタイル

本当は、会社の飲み会や遊んでいたメンズたちの前ではまず口にしない、可愛くない酒が好きだ。

山村相手なら注文できてしまうことは、もしかしたら幸福なことなのかもしれない。

カップル向け個室の色っぽい照明。

狭いテーブルとL字の座席の距離感。

いつ触れてもおかしくない山村の腕、手、指。

私好みの顔と声。

迫られたら逃げられない緊張感。

煙草の煙、喉仏の動き方、視線の向き。

山村のすべてが私を酔わせる。

こんなに飲んだの、いつぶりだろう。

男といるのに酔っ払うまで飲んだのは初めてだ。

「だいぶ飲んだね。大丈夫?」

言いながら私の頬に触れる指が憎たらしくて愛しい。

……愛しい?

「大丈夫じゃないみたい」

だって私今、彼の指にキスしたいと思った。

頭がおかしくなっている。

「だろうね」

酒に飲まれるなんて言語道断、美女失格だ。

でもいいや。相手は山村だもん。

私が本当は美女じゃないと、知っているんだし。

「まだ遅くはないけど、6時前から飲んでるからなぁ。もう帰る?」

「やだー。まだ飲むー。帰るなら一人で帰ってよ」

「酔った女一人置いて帰れるかっての。気が済むまで付き合いますよ」

山村の大きな手が私の頭を撫でる。

気持ちいい。

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