ライアーライフスタイル
山村の言葉に安心して、またグラスに口をつけた。
私は透明な酒ばかり飲んでいるのに対して、山村はずっとカラフルなものを飲んでいる。
今のグラスは、濃いオレンジ色。
「ねぇ、何飲んでるの?」
「これ? これはマンゴーオレンジサワー」
「何それ美味しいの?」
「美味しいよ。飲む?」
差し出されたグラスを掴み、一口。
甘酸っぱくて、フルーティー。
「美味しいね」
私が笑って見せると、彼もにっこり口角を上げる。
「だろ?」
「さっきから、お酒のチョイスが女の子みたい」
「俺、甘い酒好きなんだよ。仕事飲みの時は飲まないようにしてるけど」
「せっかくカッコつけてたのに、私の前で飲んでちゃ意味なくない?」
「相手が弦川さんだからいいんだよ。あんたこそ、懇親会では甘い酒しか飲まないくせに、俺の前で焼酎飲んでる」
「山村さんだから、いいんだもん」
最大の秘密に気付いてすら構ってくる男相手にかわいこぶっても意味がない。
そういう意味で言ったのだが、山村は嬉しそうに微笑んだ。
「可愛いこと言って、俺がその気になったらどうすんの」
顔が一気に熱くなって、余計に酒が回る感覚がする。
「もうー。さてはあんたも酔ってるでしょ?」
「酔ってるよ。だから俺、何するかわかんないよ?」
「ふふふ、何するつもりー?」
「そうだな。何しようか」
山村が笑っている。
すごく楽しそうに笑っている。
酔っているせいか、それがとても幸せなことに思える。
きっと私は山村以上に笑っている。
酔って無様に笑っている。