ライアーライフスタイル
次に聞こえたのはこんな言葉だった。
「鍵どこ?」
朦朧とした意識の中で何とか“鍵”というキーワードを認識できた私は、日常生活で体に染み付いた動作で鍵を取り出し山村に手渡す。
そのうちにカチャッと軽い音がして、扉が開いた。
嗅ぎ慣れた自宅の匂いに包まれ、安心して余計に眠くなる。
「んー……」
「こら、まだ眠っちゃダメ」
体を支える何かがとても温かくて気持ちいい。
しがみつくように擦り寄ると、期待通りに温めてくれる。
「甘えん坊だなぁ。普段もこれくらい素直になればいいのに」
山村が何か言っているが、頭が回らなくて何を言っているか理解できない。
体が傾き、ゆっくり沈む。
さっきとは別の何かに包まれた。
少しひんやりしてちょっとだけ目が覚めた。
目の前に山村の顔がある。