ライアーライフスタイル
山村は私の顔にかかった髪をゆっくりと掻き上げ、「おやすみ」と言って額に軽く口付けた。
身体中にマンゴーオレンジサワーのような、甘酸っぱい感覚が駆け巡る。
胸がきゅうきゅう締め付けられるのに、それをどう表現していいかわからない。
「おやすみ」
私が小さく返すと、山村が微笑んだ。
「またね。今日はありがとな」
そして軽く手を振った。
山村が、笑顔で、手を振った。
それを見た私は、ものすごく不安な気持ちに襲われた。
目頭がツン熱くなる。
私には涙をこらえる力が残っていない。
流れた涙が枕を濡らす。
「何で泣くの」
山村が困惑した顔で尋ねる。
「あんたが帰ったら、すごく悪いことが起こる気がして、怖い」
私の言葉に、彼はハッとした表情を浮かべた。
私の不安の理由に、心当たりがあったのだろう。
切なく歪んだ顔が近づき、掛け布団越ごと彼の腕に包まれる。
キスされる……と身構えたが、彼は頬と頬を合わせるに留めた。
トン、トン、と背中にリズムを感じる。
私も彼の背に腕を回した。
「大丈夫。大丈夫だから」
「ほんと?」
「本当だよ。大丈夫」