ライアーライフスタイル
ランチタイムが終わり、午後の業務を開始した頃だった。
「弦川さん。忙しいところ恐縮なんだが、これからすぐ本社まで付き合ってくれないかな」
古田所長がやけに真面目な顔でそう言った。
このタイミングだ。
新田主任のことで話を聞かれるのだろう。
所長はもう、私たちのことを耳にしている可能性が高い。
「わかりました。何かあったんですか?」
我ながら白々しいが、必要なリアクションだ。
所長はただ淡々と「ちょっとね。説明は後でする」と告げ、さっさと自分の荷物を持って営業所を出て行った。
私は制服を身に着けたままバッグを持って所長を追い、彼の社用車の助手席へと乗り込んだ。
発車してしばらくは、どちらも口を開かなかった。
沈黙を破ったのは、緊張で落ち着かない私の方だった。
「主任、どうして辞めたんですか?」
所長はハンドルを握りしっかり前を向いたまま答える。
「逃げたんだよ」
やっぱり。
舌を打ちたくなるのを堪え、私は白々しい演技を続ける。
「逃げたって……何からですか?」
所長はすぐには答えてくれず、しばらく重い沈黙に堪えた。
「責任から、かな」