ライアーライフスタイル
聞きたいことはたくさんある。
私が関係してるんですか?
山村が何か言ってきたんですか?
オリエンタル・オンとイズミ商事には何かあったんですか?
だけど私が自分から尋ねるわけにはいかない。
まだ何の情報も与えられていないのだから。
ややあって、所長がゆっくり語り始める。
「新田に仕事を教えたのは俺だったんだ」
「そう聞いてます」
しかし私は、あまり信じていなかった。
所内でリーダーシップを取るのは常に新田主任だったし、古田所長に“仕事ができる”というイメージもない。
失礼ながら、所長より新田主任の方が格上のように思っていたのは事実だ。
「新田はああ見えてかなり小心者でな。自信が持てないようだったから、取引を有利に進めるコツを色々教えたんだよ。世の中そんなに甘くないし、バカ正直にやっても儲からない。不利な状況に陥ったときに使えるカードをストックしておいて、いざという時に使う技を仕込んだ」
「カード……ですか」
山村に聞かせてもらった会話でも、カードという言葉が使われていた。
「端的に言えば、相手の弱味ってことだよ」
「でもそれって、表立っては使えない反則技ですよね?」
「ああ。使い方を誤れば倍になって跳ね返る。このご時世では特にな」
あの録音を聞く限り、新田主任は山村に対し、特約店の弱味をつつくことで彼に私を諦めさせようとしていた。
ビジネスをカードにして、プライベートの取引を持ちかけていたのだ。
「つまり新田主任は……」
「そう。カードの使い方を誤った」