ライアーライフスタイル
所長の話しぶりで、予感が確信に変わる。
山村が本当に動いたのだ。
「カードを出すときは、契約書にサインするときと同じくらい慎重にならなければならない。内容によっては信用を失うし、頻繁だと相手が取引する気をなくしてしまう可能性もある。加減が重要なんだ。あいつはここ数年うまくやってたようだから、調子に乗ったのかもしれないな。カードを使うという反則技を、もはや当たり前のように使うようになっていた」
取引先の人たちは、新田主任だけにはやけにペコペコしていた。
私はそれを、新田主任の人望のように思っていたけれど、もしかしたら彼らは新田主任の機嫌を損ないカードを出されることを恐れていただけかもしれない。
「そしてそのせいで、倍返しを受けているということですか?」
「ああ。相手は初めから新田を潰す気だった。その分用意周到で、刺し違える覚悟もあった。一枚上手だったんだ。新田は敵わないことを悟って、潰される前に逃げた」
呼吸も楽にできないくらい、車内の空気が重い。
固有名詞は出していないが、所長は私がおおかたの事情を承知しているのをわかったうえで話している。
私の白々しい演技はおそらく無意味だった。
「本社に私を同伴させたのはなぜです?」
「大事な話をするためだよ」
「そうですか。そう言われると、何だか怖いですね」
私は笑顔を向けたけれど、所長から笑顔が返ってくることはない。
「そうだね」
所長がそう言うのだから間違いないだろう。
これから本当に怖いことが起きるのだ。