ライアーライフスタイル
株式会社イズミ商事の本社は自社ビルではなく、新宿のとある高層ビルの中にテナントで入っている。
ここに来るのは就活の時を含めて4回目だ。
馴染みがなくて歩きづらい。
本社に入るなり、所長は顔パスで入り口すぐの部屋に通された。
私は社員証を提示し、彼の後を追う。
面接の時に入った覚えのある部屋だった。
所長と二人並んで座る。
間もなく中年の男性が二人入ってきた。
我々が担当している業務の最高責任者である常務と、社員の進退を決定する権利を持つ人事部長だ。
私と所長は立ち上がり、一礼した。
「わざわざご苦労だったね」
「恐れ入ります」
結構な重役が二人も出てきた。
思ったより事態は大事になっているのだとわかる。
「弦川真咲さんだね」
「はい。お久しぶりです」
恭しく頭を下げ、にこりと笑顔を見せておく。
追求される覚悟はもうできているが、無様に怯みたくはない。
私に倣ってか、人事部長も不気味な笑みを浮かべて問う。
「新田くんのことは聞いたかな?」
「はい。急に退社されたと」
「退社の理由は?」
「いいえ、具体的には何も」