ライアーライフスタイル
ここで少し、間が空いた。
常務と人事部長が、古田所長とアイコンタクトを取る。
古田所長を頼りにするつもりはなかったけれど、彼は今回の件に関して、私の味方ではないようだ。
入社以来ずっと関わってきた人だからこそ、残念でならない。
「……とりあえず、座ろうか」
「ありがとうございます。失礼します」
6人がけのテーブルに、2−2の対面で着席した。
覚悟はしているが、いざとなるとやっぱり怖い。
だけど私は戦うしかないのだ。
守ってくれる人など、誰もいないのだから。
「こんなこと、会社としては本来聞くべきではないのだけど。事情があって事実確認をしたいから、正直に答えてほしい」
常務の語り口は優しい。
しかし私は嘘つきだ。
本当のことなど、誰が話すもんか。
「新田くんと付き合っていたの?」
「えっ? まさか。主任には奥さまがいらっしゃるのに、付き合うだなんてありえません」
まるで条件反射で声を出してしまったような驚きと、馬鹿馬鹿しい質問に呆れる気持ちを込めて答える。
私の演技は完璧だった。
しかし彼らは冷ややかな表情で私を吟味している。
「誤解だったかな」
「もちろんです」
認めるもんか。
主任が会社を去った今となっては、私の思ったように話を作り出せる。