ライアーライフスタイル

「それじゃあ、これを説明してくれるかな」

人事部長が持ってきた封筒の中から、四角い何かを取り出した。

テーブルの上に差し出してきたのは、一枚のCDだった。

「何ですか、これは」

そう尋ねたが、想像はついている。

これにはおそらく、山村がボイスレコーダーで録音していた音声データが入っている。

人事部長は持ってきたノートPCにディスクをセットした。

簡単に操作すると、音声が再生される。

先日山村に聞かされた会話だ。

しかし、私が聞いていない、あの続きも収録されていた。

 ◆◆◆

……彼女に訴えさせたければ好きにすればいいですよ。

その代わり、僕はあなたを全力で追い込んで、この業界から追い出します。

あなたが高田さんにしたようにね。

何だって?

僕の前任の高田です。

あなたに精神的に追い込まれたせいで心を患った、尊敬する僕の上司です。

覚えていないとは言わせない。

患ったって、そんな大袈裟な。

それに業界から追い出すだなんて、君なんかにできるはずがない。

できますよ。

本当は高田さんがあなたのせいで病んでしまったという証拠をじっくり集めて突きつけるつもりだったんですけど、正直苦戦してたんです。

でも先ほど新田さんが思わぬところでボロを出してくれたので、案外楽にいけるかもしれないと、今は思っています。

ボロ? 俺が?

弦川さんとのことです。

ハッ、無理無理。

俺と真咲は慎重なんだ。

証拠なんか出るはずがない。

……認めましたね? 彼女との関係を。

はは、好きな女が俺なんかに取られてて残念だったね。

 ◆◆◆

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