ライアーライフスタイル

何よ何よ何よ。

山村も主任も所長も常務も人事部長も、もうとっくにわかっていたんじゃない。

そのくせみんな私に曖昧な態度を取って、本当のところはわかっていないようなふりをして。

促せば簡単に自首するとでも思ったの?

自首したら、何かしら情状酌量があったとでもいうの?

社内不倫がバレた時の相場が、役職持ちの男は降格、女は何だかんだでクビだってことくらい、承知してる。

酌量されたところで、社内で晒し首状態のまま働けるわけがない。

でも、お生憎さま。

私はこの程度で落ちるような女じゃない。

「主任、何言ってるんでしょう。私たち、本当に何もないのに」

新田主任が私と付き合っているという設定で、山村から私を守ろうとしている。

という方向に持っていくつもりだった。

しかしここにいる男性3人の冷徹な顔を見ると、私の嘘が効いていないのは明らかだった。

「見苦しいよ、弦川さん」

そう告げたのは古田所長だった。

「だって、私……」

「新田が辞めた。それも突然、こんなキリの悪い時期に、だ」

常務が続く。

「それがどういうことか、君にだってわかるだろう?」

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