ライアーライフスタイル
「皆さん、意地悪ですね。それだけの情報を持っていらっしゃるなら、始めから私を責めてくださればよかったのに」
わざわざ私に恥をかかせてから追い込むなんて、性格が悪いにも程がある。
「それについては、悪かった」
謝ったのは古田所長だ。
対面している二人は、変わらず私を蔑むように不気味な笑いを浮かべている。
私は背筋を伸ばし、真っ直ぐに常務と人事部長を見据えた。
「私たちの不適切な行動のせいで、会社に多大なご迷惑をおかけする事態を引き起こしてしまいました。申し訳ありませんでした」
私はもうあの営業所では働かせてもらえないだろう。
最悪の事態も想定している。
それでも、私は逃げずに罰を受け入れる覚悟を決めてここへ来た。
「じゃあ、話を進めるよ」
「どうぞ」
「会社としては、懲戒や解雇はしたくない。とはいえこのままというわけにはいかないから、自主退社してもらうことになる。よって有給も消化してもらって構わない。社内では当然噂になってしまうだろうが、それでオリオンに一応の“しめし”はつけられる。君の再就職を考えても、経歴に傷は残さない方がいいだろう」
「お気遣い、ありがとうございます」
私の失敗は新田主任と関係を持ったことではない。
新田洋輔という男を過大評価し、過信していたことだ。
「人を見る目がない」と言った山村は正しかった。
嘘は共有すべきでない。
自分一人で守るべきだった。