ライアーライフスタイル

「でも、適した人に任せるのは上手ですよね。仕切る人と報告の文書を作る人間が一気に辞めて大変になるとは思いますけど、これからも所長として頑張ってくださいね」

私の軽口に、所長がおかしそうに笑う。

「俺はもう少し出世したいけどね」

彼が渋々自分の仕事をする様子が見られないのは残念だ。

「私、着替えてきます」

特に大きな私物はない。

あっても堀口さんがお茶やコーヒーを入れてくれるカップくらいだが、家では不要だし、ここに置いていこう。

制服から私服に着替え、ロッカーに入れていた冬物のブラウスを紙袋に入れる。

クリーニングに出して、本社に送らねばならない。

「何かわからないことがあったら電話をください。所長から」

「わかった」

「所長。入社してから3年半。本当にお世話になりました」

「こちらこそ」

「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。主任の分まで私が謝ります」

「まったくだ。こういうのはバレないようにやってくれよ。出来る人間が二人も消えて、明日からうちは嵐のような毎日になる。残念だよ」

所長は笑いながらそう言って、私を送り出してくれた。

さようなら、みんな。

どうかお元気で。


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