ライアーライフスタイル
「おかえり」
山村はバツが悪そうにそう言った。
私にはもう無視を決め込むほどの気力は残っていない。
目を合わせることはせず、言葉だけ返す。
「何かご用?」
「話、したくて」
もう全て終わったのに、これ以上何の話ができると言うの。
「何?」
過去最高に無愛想な声が出たと思う。
山村は構わず話を続ける。
「俺、イズミの担当外れることになった」
「あっそ」
私にはもう関係ない。
少し前なら大喜びしていたのだろうが、もう何の感情も湧かない。
「仇(かたき)が取れたから、満足してる」
仇……つまり、前任の高田さんの仇ということだ。
「高田さん、もう平気なの?」
いつも笑って楽しい話題を提供してくれる、素敵なおじさまだった。
仕事も丁寧で、誠実で、彼が担当だったから、私はオリエンタル・オンが好きだった。
「あの人の病気はそんなに簡単に治らないよ」
「そうだよね……」
自分のせいではないけれど、イズミの人間として心苦しい。
私たちの利益のために無理をさせられていたのだ。