ライアーライフスタイル
家族の中で、私は「しっかり者の長女」である。
勉強も運動も妹弟よりよくできた。
仕事を辞めたくらいで誰も心配しないのは、私がそれなりの考えを持ってそうしたのだと信じて疑っていないからだろう。
社内不倫がバレて、クビ同然で辞めたなどとは夢にも思うまい。
「うちに帰ってくるとか言わないでよ。家が狭くなるから」
生意気盛りの弟が顔を歪める。
「帰らないよ」
「こんな田舎よりも東京の方が楽しいものね」
「遊びに行く時は泊めてね」
母と妹も、私には東京にいてほしい口ぶりだ。
なんだかみんな、私がここにいてほしくないみたい……。
密かに寂しく思っていると、父だけは残念そうな顔をしてくれた。
「だったら少し長くここにいたらどうだ?」
「うん。でもまだ考え中」
いずれにしろ、これは一時的な帰郷で、この町に残るつもりはない。
ここを出たら東京で職探しをしてもいいし、どこか別の地方へ行くのもおもしろそうだ。
今度こそかつての知り合いと再会しない、まったく新しい土地でやり直すのもいいだろう。
そういう意味では、海外へ進出するのもいいかもしれない。