ライアーライフスタイル

「会社辞めたし、暫くはゆっくり体を休めたかったから、誰にも連絡してない」

家族に心配をかけるようなことは何も言いたくない。

だから友達がいないことは隠している。

「もったいない。次はいつ帰るかわからないんでしょう?」

「そのうちまた帰ってくるって」

いつになるかはわからないけれど。

私はまたごろんと寝転がった。

蝉の鳴き声が空気をビリビリ震わせている。

夏だなぁ。

こんなにじっくり蝉の声を聞くのは小学生ぶりだ。

中学の時は部活、高校の時は強制参加の補習授業で忙しかった。

ふと16年前、小学4年生の夏休みのことを思い出す。

あの頃の私は、山村のブス発言のせいで外に出ることが怖かった。

この団地に住む同い年の男の子たちに遭遇すると「ブス! ブス!」とからかわれる。

誰にも会いたくなかった。

そして8月に入ってすぐ、逃げるように父の実家、つまり私の祖父母の家へと転がり込んだ。
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