ライアーライフスタイル
感傷に浸っていると、母がふとこんなことを言い出した。
「ねえ、真咲。今思い出したことがあるんだけど」
「何?」
「たぶん、真咲が4年生の頃だったかな。あの頃、真咲ずっと元気がなかったじゃない?」
「……そうだっけ。覚えてないや」
もちろん覚えている、ちょうどそのことを思い出していた。
今も同じ男に傷つけられてここにいるのだ。
「そうよ。それで、真咲がおばあちゃんの家に行ってる時だったと思うんだけど、お友達が一人、うちを訪ねてきたのよ」
「お友達?」
あの頃の私にそんな存在がいた記憶がない。
周りはみんな敵だった。
「名前、何だったかなー。思い出せない」
「思い出してよ。気になるじゃん」
「もう15年以上前のことだからね。うーん、えっと……」
「名前なんていいよ。どんな子だった?」
母はそれなら明言できると言わんばかりに即答した。
「可愛らしい男の子だったわよ」