ライアーライフスタイル

感傷に浸っていると、母がふとこんなことを言い出した。

「ねえ、真咲。今思い出したことがあるんだけど」

「何?」

「たぶん、真咲が4年生の頃だったかな。あの頃、真咲ずっと元気がなかったじゃない?」

「……そうだっけ。覚えてないや」

もちろん覚えている、ちょうどそのことを思い出していた。

今も同じ男に傷つけられてここにいるのだ。

「そうよ。それで、真咲がおばあちゃんの家に行ってる時だったと思うんだけど、お友達が一人、うちを訪ねてきたのよ」

「お友達?」

あの頃の私にそんな存在がいた記憶がない。

周りはみんな敵だった。

「名前、何だったかなー。思い出せない」

「思い出してよ。気になるじゃん」

「もう15年以上前のことだからね。うーん、えっと……」

「名前なんていいよ。どんな子だった?」

母はそれなら明言できると言わんばかりに即答した。

「可愛らしい男の子だったわよ」
< 366 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop