ライアーライフスタイル

小学校付近は街灯が少なく、暗くて不気味だった。

校舎が見える道をぐるりと一周し、門からは少し離れているけれど、車を停められる側道で降車した。

車内で冷房を直で浴びていた体に、夏の夜の空気が心地いい……と思った瞬間、ビリっと左手が痛んだ。

グラスで切った傷は、まだ完全には治っていない。

ゆっくり歩いて校門に向かう。

柵を越えれば敷地の中に入れそうだが、関係者以外立ち入り禁止の看板を見て思い止まる。

「懐かしい」

ぽつり呟く。

誰もそうだねとは言ってくれない。

今も昔も、私は孤独だ。

門から通学路を歩いてみる。

たった一度だけ、この道を山村と歩いたことがあった。

嬉しかったし、楽しかった。

自分から声をかける勇気はなかった彼と、もしかしたらこれからも仲よくできるのではないかと、私の心は期待と希望に満ちていた。

笑ってくれて、「ありがとな」と言ってくれて、こんな私にもクラスメイトとして接してくれた彼を、ますます好きになった。

……だからこそ、その直後につけられた傷が深くなったのだ。

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